「今口くん、それ終わったら、今日はもう終わりにしてくれ。」
「ハイ。」
「しかし、今口くんに来てもらってホントに助かったよ。」
「ホントですか?嬉しいです。」
「ちょっとコーヒーでも飲んでいけよ。」
「は、はい。ごちそうになります。」
「ホラ!俺はこっちにさせてもらうけどな。忙しくしてると、酒、飲むくらいしか楽しみが無くなっちゃうよ。ゴルフも最近、してねぇなぁ」
「社長、こないだゴルフじゃ?」
「接待でやるゴルフなんて、ゴルフじゃないからなぁ。上手く負けるってのもなかなか難しいんだぜ。」
「大変なんすね。」
「まあ、君たちも社会に出ればそんなことは嫌でも山ほど経験できるからな。」
「俺…、無理っすね、わざと負けるなんて…。」
「負けず嫌いか…。まあ大人になりゃわかるが、自分が一体ナニで負けちゃいけないかってことがよ。」
「…。」
「ところで、うちの仕事、楽しいか?」
「ハイ。すごく。」
「そうか…。じゃあ、バイト代、無しでいいか!」
「あ!俺、それでもいいっす。」
「ハハハ。冗談だよ。ところで、翔馬から聞いたよ。」
「え?」
「旅行会社に就職したいんだって?」
「あ、はい…。」
「何でまた旅行会社なんだ?」
「俺、旅行の仕事が性に合ってるみたいで楽しいんです。俺、仕事なんて何をやってもつまらないもんだと思ってたんですけど…。」
「そんなに面白いか?本気なんだな…。」
「俺、社長みたいに将来自分の会社作って、他ではできないようなツアーでアッと言わせてみたいです。」
「夢はでかいな!」
「社長、俺にいろいろ教えて下さい。」
「翔馬から聞いたよ。ウチに就職させてやってくれって。親に何一つねだったこと無かったあいつがな…。」
「そうですか…。俺…、一生懸命働きますから雇って下さい!何でもやります。仕事も好きですがここで働いてる人もすごい好きです。旅行の仕事が好きな人ばっかりで…。」
「当たり前だ。こんなもん、好きでなきゃ、長続きしやしない。」
「社長!よろしくお願い」
「おいおい。まだ雇ってやるとは言ってないよ。じゃあ、採用試験、やってみるか?」
「え…。し、試験ですか?」
「心配しなさんな。数学や英語の試験をやろうってんじゃない。」
「じゃあ…」
「日曜日までにとびきりのツアーの企画、持って来い。それがウチの採用試験だ。」
** 【9月26日記事の転載】 **
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